市販薬のオーバードーズ問題

◆若者に急増する市販薬の過剰摂取 （読了までの時間：2分）

はじめに

オーバードーズ（Overdose: OD）とは、医薬品の決められた用量を守らずに過剰摂取することを指します。総務省消防庁及び厚生労働省の調査によると、医薬品のオーバードーズが原因で救急搬送される人は年々増加しており、特に20代の若者に多く見られます。特に10代から20代の若年層において、その割合は全体の半数近くを占めており、深刻な社会問題となっています 。

市販薬の過剰摂取のリスク

市販薬は、処方箋がなくても購入できるため、安全性が高いと思われがちですが、過剰摂取すると重大な健康被害を引き起こす可能性があります。風邪薬や咳止め薬には、「依存性のある成分」が含まれている場合があり、これらを大量に摂取することで、幻覚や精神の興奮状態を引き起こし、一時的に不安やストレスから解放されると言われています。しかし、この効果は一時的であり、効果が切れると再び摂取を繰り返し、深刻な中毒症状を引き起こすリスクがあります。

市販薬

SNSとオーバードーズ

近年では、スマートフォンの普及により、オーバードーズに関する情報がSNSを通じて簡単に手に入るようになりました。しかし、SNSには誤情報や悪意ある誘いも多く含まれており、特に中高生が影響を受けやすいため、周囲の大人が注意深く見守ることが重要です。

薬物乱用がもたらす影響

医薬品は、医師がその人の状態に合わせて適切な量を処方します。自己判断で用量を変更して服用すると、思わぬ副作用が発生する可能性があります。また、乱用を続けると薬物の効果が薄れ、依存症になりやすくなります。薬物依存症は脳の病気であり、運動機能や記憶能力、感情のコントロールに障害を引き起こします。最悪の場合、死に至る恐れもあります。

一般用医薬品による薬物依存の実態

医薬品依存症の実態は、睡眠薬や抗不安薬、咳止め、風邪薬などの一般用医薬品（市販薬）によるものが増加しています。これらの薬品は処方箋なしで購入可能なため、一見安全そうに見えますが、依存性や中毒のリスクが伴います。市販薬に含まれる成分として、メチルエフェドリンやジヒドロコデイン、ブロモバレリル尿素などが挙げられ、これらは過剰摂取で重大な健康被害をもたらします。

市販薬による薬物依存患者は驚くような量を使用することがあります。例えば、ある患者は毎日252錠の鎮咳去痰薬を摂取し、中枢神経に強い影響を与える成分を過剰に摂取していました。これにより、食欲不振、体重減少、無気力、不眠、希死念慮などの副作用が報告されています。

市販薬依存症の特徴

市販薬依存症の患者は「若年」「男性」「高学歴」「非犯罪傾向」といった特徴があります。多くの患者は社会的ステータスを失うことを恐れ、違法薬物ではなく市販薬を選択します。依存症の原因は多岐にわたり、対人恐怖や不眠症、仕事のストレスなどから逃れるために乱用するケースが多く見られます。

薬物依存症者のアンビバレンスに寄り添う

薬物依存症者を支援するには、彼らの両価性（アンビバレンス）を理解することが重要です。薬物を使いたい気持ちと止めたい気持ちが共存している状態であり、依存症支援には共感的な態度で寄り添うことが必要です。医療者は患者の両価性を受け入れ、共感的に対応することで、患者に対する忌避的な感情を改善し、支援効果を高めることができます。

まとめ

市販薬のオーバードーズは深刻な問題であり、特に若年層において急増しています。医薬品は用法・用量を守って使用することが重要であり、自己判断での過剰摂取は避けなければなりません。薬物依存症の予防と治療には、周囲の支援と適切な教育が必要です。家庭や学校、地域社会が協力して、若者を薬物乱用から守る取り組みを進めることが求められます。

参考文献：

• 総務省消防庁及び厚生労働省の調査結果

• 週刊医学界新聞（通常号）：第3408号【file-nHDO7l5xxjv1T182mKh8uu3a】